ICSを用いたデータの取得
ICS(Intensive Care System)はプロトラック純正のオプション機器です。単体では使用できないもののプロトラックと接続するとバッテリーパックのコンディショニングや放電をおこなうことができます。プロトラックの「MONITOR」や「SAL」を使うとICSをプロトラックから制御して高度な実験ができます。今回はICSを使った実験の一例を紹介します。
** 実験データはここからダウンロードできます。データの閲覧にはPro Trak Monitor(Ver1.5.5)が別途必要です。
ここで紹介する電圧や放電時間の値はあくまで参考ということでお願いします。ICSでできることと、実験結果の傾向を紹介するのがこの記事の目的です。
説明書からの転載。プロトラック右側のDINコネクターにICSを接続します。ICSのスイッチをRUN側にするとICSによる単セル放電がはじまります。各セルの電圧はプロトラックで監視され、状況に応じてICSの放電を止めたり、充電を始めることができます。 | |
Pro Trak Monitorプログラムによる電圧の記録。ICSによる放電の例です。30Aによる放電が終わるとICSによるゆっくりとした放電が始まる。およそ2時間で0V近辺まで放電される。 |
IICSを使わなかったサイクル充放電とICSを使ったサイクル充放電の結果との結果を比べてみることにしました。サイクル充放電のパラメータは次の通りにしました。
サイクル充放電の回数:10回
サイクル間の待機時間:2時間
放電までの待機時間:30分
充電電流:5A(リニア、3ステージ充電無し)
Δ電圧:0.05V/バッテリー当たり
今回の実験にはGP3300ベースの中古マッチドバッテリーを使いました。
まずはICSを使わなかったときのデータを取得します。サイクル10回。合計31時間の長時間テスト このグラフはバッテリーパックの電圧を表しています |
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次にICSを使ってサイクル充放電をおこないます。各サイクルの始めに0V近辺まで電圧が下がっているのがわかります。 もちろん同じバッテリーを使っています |
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Pro Trak Monitorプログラムで各サイクル充放電のデータを比較します。ICSを使った場合は放電時間にアドバンテージが見られました。 |
それではデータをまとめてみます
1)ICSを使わなかったときのデータ
サイクル回数
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放電時間(30A)
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放電5分経過時の電圧
|
放電5分経過時の平均
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放電終了時の平均電圧
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1 |
339
|
6.64
|
6.913
|
6.842
|
2
|
336
|
6.60
|
6.897
|
6.824
|
3
|
334
|
6.58
|
6.891
|
6.817
|
4
|
334
|
6.58
|
6.890
|
6.811
|
5
|
337
|
6.59
|
6.904
|
6.825
|
6
|
333
|
6.58
|
6.919
|
6.839
|
7
|
333
|
6.58
|
6.929
|
6.848
|
8
|
337
|
6.63
|
6.942
|
6.859
|
9
|
339
|
6.62
|
6.923
|
6.839
|
10
|
334
|
6.58
|
6.907
|
6.825
|
平均
|
335.6
|
6.598
|
6.9115
|
6.8329
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2)ICSを使ったときのデータ
サイクル回数
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放電時間(30A)
|
放電5分経過時の電圧
|
放電5分経過時の平均
|
放電終了時の平均電圧
|
1 |
349
|
6.65
|
6.878
|
6.792
|
2
|
357
|
6.71
|
6.890
|
6.806
|
3
|
361
|
6.70
|
6.910
|
6.820
|
4
|
361
|
6.70
|
6.897
|
6.811
|
5
|
364
|
6.70
|
6.913
|
6.823
|
6
|
363
|
6.70
|
6.901
|
6.813
|
7
|
360
|
6.69
|
6.885
|
6.801
|
8
|
366
|
6.70
|
6.911
|
6.818
|
9
|
364
|
6.70
|
6.907
|
6.815
|
10
|
364
|
6.70
|
6.916
|
6.823
|
平均
|
360.9
|
6.695
|
6.9008
|
6.8122
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3)各データをグラフで比較してみる
左のグラフはICS無し、右のグラフはICSを使ったときのデータです
4)分析
ICSで0V近辺まで放電してから充電をおこなうと放電時間に約25秒の改善が見られた。ただし放電平均電圧は約0.02V低下した。
10回目のサイクルデータからバッテリーパックの電圧をグラフ化したもの。ICSを使ったほうが放電時間が長い。45秒から180秒までは電圧が低め
5)反省点
今回は充電と放電の間に30分ものアイドル時間を設けて実験しました。もうすこし短くしたり、リピークを入れることでもう少し現実的な試験ができそうです。次回はこの辺も考慮して実験しようと思います。