Push Chargeの効果

プロトラックにはPush Chargeという機能が装備されています。Push Chargeは充電、放電、リピークという一連の動作をセットにしたものです。今回はPush Chargeが放電特性にどのような影響を与えるのか実験してみました。

まずPush Chargeについて説明します。Push Chargeは次の動作をセットとして考えたものです。

@放電(セルあたり0.9Vまで)
A充電
B待機時間(Delay Part Dischargeと呼ぶ)
C一部放電(Part Dischargeと呼ぶ。放電する時間は10〜120秒の間で設定できる)
Dリピークまでの時間(Delay Repeakと呼ぶ)
Eリピーク充電(リピーク専用のカットオフ、電流を設定可能)


*B、C、D、Eは省略することもできる

Push Chargeは出走までにみなさんが何気なくおこなっている動作を一度設定するだけで自動的にやってくれる便利な機能です。

そこで今回はPush Chargeを何パターンかに分けて放電特性を調べてみました。今回試したパターンは次の5パターンです。

実験シーケンス
パターンA
パターンB
パターンC
パターンD

パターンE

放電

充電

Part Discharge
待機時間

×
60分
60分
×
60分
Part Discharge
する時間
×
1分
2分
×
3分(*)
リピークまでの待機時間
×
10分
10分
60分
10分
リピークの有無
放電までの待機時間
5分
5分
5分
5分
5分

パターンA:充電後、5分後に放電する(Part Discharge、リピーク無し)
パターンB:充電後1時間待機、1分放電し、10分後にリピーク、5分後に放電する
パターンC:充電後1時間待機、2分放電し、10分後にリピーク、5分後に放電する
パターンD:充電後1時間待機、リピーク、5分後に放電する
パターンE:充電後1時間待機、3分放電し、10分後にリピーク、5分後に放電する

 

パターンA〜Dはプロトラックに一度設定することで自動化できます。*パターンEは手動でおこないました(Part Dischargは最大2分までしか設定できないため)。前回までの実験で最もパフォーマンスの高いことがわかったパターンAにPush Chargeがどのくらい近づけるのか、その点を調べるのが今回の目的です。

実験では GP3700 ノンマッチドを組み立てた6セルパック2ヶを使いました。充電電流はいずれも6A、カットオフは0.04V/パック、放電電流は30Aです。

これはパック番号1を各パターンで充電し、放電したときの電圧を記録したものです。

やはり前回までの実験結果のとおり充電後すぐに放電をおこなうパターンAが良い結果となりました。

Part Dischargeをおこなうことで放電初期の電圧はパターンAに近づけることができました。

単にリピークだけしたパターンDが最も低い結果となっています。これも前回までの実験と同じ傾向です。

これはパック番号2を各パターンで充電し、放電したときの電圧を記録したものです。

パック1同様、パターンAが最も良く、パターンDが最も悪い結果となりました。

Pro Trak Monitorで収集したデータをまとめてみました。AV1は放電開始から5分経過した時点の平均電圧、AVEは放電時間全体での平均電圧です。

パターンAが放電時間、電圧とも最も良い結果になっていることがハッキリわかります。そして単にリピークだけおこなったパターンDでは特に電圧が他より低くなっていることがわかります。

一方Part DischargeをおこなったパターンB、C、EではパターンAほどではありませんが電圧が高めになっていることがわかります。3分間放電したパターンEでは放電時間が短くなっている点も興味深い点です

こちらはパック2のデータです。

Part Dischargeの時間が長いほど電圧の改善が見られます。ただこちらもPart Dischargeを3分おこなった場合は電圧は高くなるものの放電時間は短くなってしまいました(といっても10秒ほどなので最近の大容量セルならあまり問題にならないレベルかもしれません)

まとめ:充電後なるべく早く放電するのが最もパフォーマンスが良い。充電後時間が経ってしまった場合は単にリピークするよりも一部放電し、リピークをおこなった方が良い。放電時間を長くすると電圧を改善できる(もちろんその分リピーク時間も長くなる)、ただし3分放電すると放電時間が短くなってしまう。放電時間は2〜3分の間にするのが良さそう。