デッドショートによる放電特性
バッテリー端子をそれぞれ接続してショート(=デッドショート。以下DS)させた場合に放電特性がどのように変化するのか実験してみました。今回はDSする時間を中心のレポートになっています。
**ここで紹介する方法は説明書に記載されていない方法なのでおそらくメーカ保証対象外になります。実行は自己責任でお願いします**
<実験の方法>
●4セルバッテリーを使用しました
●測定にはCDC Ver5.0チャージャーを使用しました
●充電は4.5A。カット電圧はピークから24mVダウンしたところ(セル当たり6mV)に設定しました
●放電は20Aとしました
●CDCチャージャーのサイクル充放電機能を使用しました(充電-->放電のアイドル時間は1分)
●室温・バッテリ温度は特に管理しませんでした
●今回の実験ではイーグル模型のGP3000(SPセルの前世代)を使いました
●あらかじめ実験に使う各バッテリーをサイクル充電し、基本データを取得しておきました
実験に使えるバッテリーに限りがあるので、DSする時間は次のように決めました。
DSする時間--> 10分、30分、1時間、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日
0.9V(セル当たり)まで放電したバッテリーをいきなりDSすると火花が出て危険なので、オートカット機能を持たない単セル放電器で0V近辺まで放電し、DSすることにしました。
リード線でDSしたバッテリー。DSする時間を色々と変えてバッテリーを保存。放電特性がどのように変化するか確認するのが実験の目的。 | |
DSする時間によっては4セル全体の電圧が0.1〜0.2Vとなり、充電器にバッテリーが認識されない場合がありました。 | |
これでは実験ができないので、5V安定化電源をバッテリーに直接接続し、強制的に電圧を上げてから充電しました。安定化電源につなげる時間は1秒ほどです。 |
1)10分DSした場合
充電容量(mAh)
|
放電容量(mAh)
|
放電時間(秒)
|
放電平均電圧(V)
|
放電電力(mwAh/cell)
|
|
基本データ
|
3515
|
3273
|
594
|
4.679
|
3860
|
10分DS
|
3662(+147)
|
3209(-64)
|
582(-12)
|
4.674(-0.005)
|
3778(-82)
|
基本データを収集してから3日間後、充電直前に10分DS場合、基本データとあまり大きな変化がありませんでした。ただし傾向としては充電容量が多くなり、放電時間が短くなっていることがわかりました。
2)30分DSした場合
充電容量(mAh)
|
放電容量(mAh)
|
放電時間(秒)
|
放電平均電圧(V)
|
放電電力(mwAh/cell)
|
|
基本データ
|
3549
|
3322
|
602
|
4.652
|
3890
|
10分DS
|
3665(+116)
|
3195(-127)
|
583(-19)
|
4.648(-0.004)
|
3764(-126)
|
基本データを収集してから3日間後、充電直前に30分DSした場合、基本データとあまり大きな変化がありませんでした。ただし傾向としては充電容量が多くなり、放電時間が短くなっていることがわかりました。
3)1時間DSした場合
充電容量(mAh)
|
放電容量(mAh)
|
放電時間(秒)
|
放電平均電圧(V)
|
放電電力(mwAh/cell)
|
|
基本データ
|
3445
|
3146
|
572
|
4.645
|
3690
|
10分DS
|
3661(+216)
|
3068(-78)
|
561(-11)
|
4.571(-0.074)
|
3562(-128)
|
基本データを収集してから3日間後、充電直前に1時間DSした場合、 放電平均電圧が低下しています。
4)6時間DSした場合
充電容量(mAh)
|
放電容量(mAh)
|
放電時間(秒)
|
放電平均電圧(V)
|
放電電力(mwAh/cell)
|
|
基本データ
|
3404
|
3173
|
578
|
4.670
|
3749
|
10分DS
|
3701(+297)
|
3053(-120)
|
557(-21)
|
4.723(+0.053)
|
3654(-95)
|
基本データを収集してから3日間後、充電直前に6時間DSした場合、放電平均電圧が向上しました。ただし放電時間が短くなっているので放電電力は下がっています。
5)12時間DSした場合
充電容量(mAh)
|
放電容量(mAh)
|
放電時間(秒)
|
放電平均電圧(V)
|
放電電力(mwAh/cell)
|
|
基本データ
|
3343
|
3055
|
558
|
4.681
|
3628
|
10分DS
|
3683(+340)
|
3015(-40)
|
549(-9)
|
4.715(+0.034)
|
3595(-33)
|
基本データを収集してから3日間後、充電直前に12時間DSした場合、放電平均電圧が向上しました。ただし放電時間が短くなっているので放電電力は下がっています。
6)1日DSした場合
充電容量(mAh)
|
放電容量(mAh)
|
放電時間(秒)
|
放電平均電圧(V)
|
放電電力(mwAh/cell)
|
|
基本データ
|
3496
|
3277
|
597
|
4.653
|
3858
|
10分DS
|
3718(+222)
|
3026(-251)
|
547(-50)
|
4.730(+0.077)
|
3593(-260)
|
基本データを収集してから2日間後、充電直前に1日DSした場合、放電平均電圧が向上しました。ただし放電時間が短くなっているので放電電力は下がっています。
7)2日DSした場合
充電容量(mAh)
|
放電容量(mAh)
|
放電時間(秒)
|
放電平均電圧(V)
|
放電電力(mwAh/cell)
|
|
基本データ
|
3381
|
3122
|
566
|
4.616
|
3629
|
10分DS
|
3745(+364)
|
3002(-120)
|
545(-21)
|
4.668(+0.052)
|
3533(-96)
|
基本データを収集してから3日間後、充電直前に2日DSした場合、放電平均電圧が向上しました。ただし放電時間が短くなっているので放電電力は下がっています。
8)3日DSした場合
充電容量(mAh)
|
放電容量(mAh)
|
放電時間(秒)
|
放電平均電圧(V)
|
放電電力(mwAh/cell)
|
|
基本データ
|
3705
|
3180
|
576
|
4.676
|
3741
|
10分DS
|
3846(+141)
|
3104(-76)
|
565(-11)
|
4.729(+0.053)
|
3711(-30)
|
基本データを収集してから6日間後、充電直前に3日DSした場合、放電平均電圧が向上しました。ただし放電時間が短くなっているので放電電力は下がっています。
9)4日DSした場合
充電容量(mAh)
|
放電容量(mAh)
|
放電時間(秒)
|
放電平均電圧(V)
|
放電電力(mwAh/cell)
|
|
基本データ
|
3326
|
3090
|
556
|
4.715
|
3641
|
10分DS
|
3740(+414)
|
3006(-84)
|
542(-14)
|
4.714(-0.001)
|
3549(-92)
|
基本データを収集してから2日間後、充電直前に4日DSした場合、放電平均電圧はほとんど変化ありませんでした。
10)5日DSした場合
充電容量(mAh)
|
放電容量(mAh)
|
放電時間(秒)
|
放電平均電圧(V)
|
放電電力(mwAh/cell)
|
|
基本データ
|
3303
|
3027
|
551
|
4.695
|
3593
|
10分DS
|
3720(+417)
|
2970(-57)
|
540(-11)
|
4.695(0.000)
|
3521(-72)
|
基本データを収集してから1日間後、充電直前に5日DSした場合、放電平均電圧は変化ありませんでした。
まとめ
●DSすることで放電平均電圧があがる
●ただし放電時間が短くなる
●今回の実験では6時間〜3日の間でDSすると電圧向上することがわかった
数字にすると最大で0.077Vの電圧向上が見られました。まだ実走行はしていませんが、おそらくパワーの違いを体感できるレベルだと思われます。ただし走行時間は短くなるので、8分を競わない練習レベルでの使用には適していると思います。
次回に向けて
●バッテリーの休息時間を十分に設けて実験する
●室温・バッテリー温度を管理する