EPS-J 2015チャンピオン篠宮選手から優勝の副賞であるSnowbird2016への参戦記が届きました。お忙しいところ自発的に詳しいレポートをお書きいただき感謝いたします。今後Snowbirdにチャレンジしたいドライバーの参考になること間違い無しです
皆さんこんにちは。昨年行われたEPS-J 17.5tクラス年間シリーズチャンピオンの副賞として、アメリカのフロリダで行われたSnowbird Nationals に参加してきました。今回はストックドライバー視点で会場の様子やトレンドなどを交えてレポートさせて頂きます。
スノーバードはフロリダ、ディズニーワールドのすぐ側にあるホテルのイベントホールを借り切って、常設並みの立派なサーキットを設置し主にアメリカ各地のトップドライバーが集まり1週間に渡って様々なカテゴリーのレースを行う、何ともアメリカらしい豪快なイベントです。
アメリカの12ストックレースには17.5tと13.5tの2クラスがあって、17.5tに人気があり53人、13.5tは33人の参加がありました。
私は両クラスに参戦します。車はCRCでセッティングは両クラスほぼ同一です。パワーソースはトリニティ、モーターはD4-1S Certified、マグネットはターコイズ、進角は50°前後、指数は17.5tが96、13.5tは86位を基本にしています。バッテリーはホワイトカーボンHV とレブテックFormulaX を2本づつ用意していきました。
グリップ剤はSTX3.0、これは普段使っている物より強力な印象です。
そして路面ですが、今大会から初採用されたCRC製の新カーペットFast track2を新品状態から使用します。こちらは例年鬼グリップだったらしい旧カーペット以上のグリップが噂されており、大変楽しみです。
1/26月、練習日
各クラス5分程の練習が4回位できました。まずは普段通りの前後スポンジ系タイヤの車で、走れなくは無いですが非常に前勝ち状態でした。そこでプロポの舵角を10〜15%減らすとイージードライブとはいきませんが何とか周回出来る状態になりました。その後Fタイヤをショルダーグルー、0.5mm小径化などして、ベストラップタイムはトップグループと遜色なく、ハンドリングもこの時点ではほぼ満足な状態になりました。
1/27水、練習日、コントロール1回
各クラス2〜4回程の練習ができました。練習走行では、前後ラバー系タイヤを試しました。ショルダーグルーをしているのでハンドリングはあまり変わりませんがややグリップが軽く運転がシビアな印象で、この時点ではスポンジ系に分がありそうです。
そしていよいよコントロールプラクティス、レース序盤から気持ち良く快走できます。アナウンスもTQペース‼︎ を連呼しており、他車も近付くと避けてくれるような状況でした。しかし、4分が過ぎると引き離した後続が再び接近、終盤には抜き返されてしまいました。ここで初めてトップドライバーたちとの大きな差を感じました。私はレース序盤に電力を使い過ぎている為か終盤のパワーダウンが激しいのです。恐らく後半の4分で5秒以上は失っていると思われます。日本国内でもその傾向はあったのですが、国内では終盤にグリップもダウンするのでここまで激しい落ち込みは感じていませんでした。一方トップドライバーたちはゴールまでラップペースを落とさず走行しています。
この時点では充電方法にタイム向上の鍵があると考えました。アメリカ人選手の多くは充電前に40Aで放電し電池を活性化させてから40Aで充電しているようです。これは電池の容量を使い切らないストックレースならではのやり方だと思いますが、もしかしたら全般的なラップ向上が見込めるのかも知れません。あとは指数とモーター進角の微調整で8分間トータルラップの向上を目指します。
1/28木、予選x2
この日からレース本番です
スノーバードでは毎朝の2時間、約3分間の入れ替え制で自由練習ができます。
タイヤ慣らしを兼ねてラバー系とスポンジ系の比較をします。昨日よりラバー系が好印象でしたが、まだスポンジ系が勝ります。私は今大会タイヤは中古の方が走り始めからフィーリングが安定していたので慣らした物をレースで使っていました。減らないのでレースレベルでも2パック以上は使えました。
朝の練習では8分間通して走れないので、予選は指数と進角を探りながら走ります。なるべくトップスピードとラップタイムを落とさないように指数を上げて進角を減らす方向で微調整すると、8分間で2秒位のタイムアップが望めました。
あとはグリップ剤の置時間をできるだけ短くし、なるべく軽いグリップで走れるようにします。それまでは前10分後20分置いていましたが、この時点でグリップ剤が切れる事はまず無いような路面状況でしたので前後5分程でも問題なしでした。これで1秒はタイムを削れた?のではと思います。また、ほとんどの選手はピットを離れる間際にグリップ剤を塗り、出走前に待機スペースで拭き取る様子で、出走直前に待機スペースで塗って2〜3分で拭き取る有力選手もいます。
各クラスの予選を2回走って
17.5t、20位/53人中、Aメイン圏内まで約8秒
13.5t、13位/33人中、Aメイン圏内まで約6秒
この日は実力を出し切った感があり、Aメインを目指すには何か思い切った事をして成功させなければなりません…参りました。
1/29金、予選x1
この日も朝の練習走行をタイヤ比較から始めます。するとラバー系がまずまずの印象でしたのでこのまま予選で使う事にします。
そしてボディ後端のリップ部分を2mm程カットしてみます。今回持ち込んだボディはAMRのみです。しかしトップドライバーたちはBA製ローラやアウディ R8、PF製ストラッカなど比較的グリップが軽めのボディを使っていました。リップ2mmカットではあまり変化を感じませんでしたのでカット量を増やして様子を見ながら予選を走る事にします。
この頃にはレース序盤にTQペース‼︎ みたいなアナウンスはすっかりされなくなりました。少し寂しいですがトータルタイム向上の為には仕方ありません。淡々と安定したペースを刻む事を心がけます。その結果17.5tクラスの予選では5秒のタイム更新ができました。
この結果を踏まえ13.5tクラスでは更に思い切ってCRCスペックタイヤを使ってみる事にしました。今大会タイヤはCRC製の使用率が高く、ラバー系の紫ライン入りのスペックタイヤやスポンジ系の前ブルー、後グリーンを使う選手が多いようでした。初めて使うCRCスペックタイヤは硬めのラバー系で軽快感が強い割にトラクションが非常に良い印象です。
そして更にリップカット量を増やして予選に挑みます。
結果、最後の最後に不運があり約4秒タイムロスしてしまいましたがそれでも5秒程自己記録を更新しました。
各クラスの予選を3回走って
17.5t、18位/53人中、Aメイン圏内まで約4秒
13.5t、12位/33人中、Aメイン圏内まで約1秒
タイム更新の要因として路面グリップ向上の影響が大きかったと思います。しかし前日よりもAメイン圏内に近づけました。
路面ですが、初日の新品状態から開始2時間位でレコードライン上はほぼフルグリップになりました。その後徐々に広がり2日目にはコース全面フルグリップになりました。カーペットの毛足が長くコシがある為かハイグリップの割りにハイサイドしにくい素晴らしい路面で、日本選手にも好評でした。
1/30土、予選x1、決勝Bメイン
昨日は好走できましたが、まだまだAメイン圏外です。更に思い切ったトライを成功させるか、何かの力を借りるしかありません。そこで17.5tクラスにも前日の13.5tクラスで非常に好調だったCRCスペックタイヤを投入します。
そしてあとひとつ何かがあればAメインを狙えるかもしれない、その何かがトリニティ社から支給して頂いたパワーユニットです。24Kモーター、各部調整済でマグネットはパープルでした。ホワイトカーボンHCバッテリー、今回トリニティのチームドライバーはハイボルテージ型ではなくハイキャパシティ型を使っていたようです。これは後半のタイム落ちがより少ないのだと思います。朝の練習でフィーリングを確認、指示された指数で加速、トップスピード、ラップタイムなどから判断すると後半のタイム落ちが少ないのであれば自己記録を更新できそうです。しかしそれは8分間走らないと分からないのでトリニティを信じて出た所勝負です。
あとはボディ後端のリップをほぼ全カット、大胆にカットしてしまいましたがどの速度域でもリアが滑り出すような気配は全くありませんでした。
しかし結果は、残念ながら前日から1秒遅れに終わりました。タイム更新できなかった理由として、いくつか小さなミスがあったのと、通常手持ちのHVバッテリーの時は規定ギリギリの車重730gで出走しますが、12gほど重いHCを載せても重量増加分のウエイトを外さずにいました。この状態だと多少ハンデだったかもしれません。
続いては13.5tクラスの最終予選です。車は昨日好走した仕様のままバッテリーのみHCに変更します。モーターもD4のままです。しかし打って変わってレース序盤からペースが上がりません。中盤以降も徐々にペースダウンして昨日のタイムに全く及ばない結果となりました。こちらも車重が少し重いのと、HC バッテリー用に指数と進角を再調整する必要があったのかも知れません。
予選最終結果
17.5t、19位/53人中、Aメイン圏内まで約6秒
13.5t、15位/33人中、Aメイン圏内まで約5秒
両クラスとも前日のタイムを更新できずBメインとなりました。しかし何かに頼らなければタイム更新できない状況までいけました。実力は出し切れたと思います。そしてBメインでトップゴールすればAメインへ勝ち上がる事ができますのでまだまだ頑張っていきます。
勝ち上がりとスケジュールの兼ね合いで決勝はBメインだけこの日に行われます。まずは17.5tクラスから、バッテリーのみHVに変更しました。グリッドは最後尾の10番です。スタートでアウトにはらみ転倒、約4秒ロスってしまいました。ラップペースに遅れを取っている状況ですのでこれは致命的でした。独走の最後尾から徐々に前方集団に近づけましたが追いつくには至らず、トップグループに道を譲った時以外ほぼ8分間一人旅状態でした。1台リタイアがあり結果 9位ゴール、ペース的には先の予選と同等でしたので完全に力負けです。
そして13.5tクラス、こちらもバッテリーはHVに変更しました。今回は綺麗にスタートを決め3〜4台の中段グループで走行、テールtoノーズのシビれる展開が続きますが、我慢の走りで抜け出し単独4位に、終盤上位の転倒があり結果3位ゴールできました。しかしこちらも力負けです。ペースは好調時に戻りましたがトップを狙える程ではありませんでした。
決勝結果
17.5t、Bメイン9位、総合18位/53人中
13.5t、Bメイン3位、総合12位/33人中
私の今大会の結果は、トップとは1周以上の差、Aメインまではあと5〜6秒でしたがこの差はレベルの接近しているストックレースでは果てしなく遠く感じます。もっと上を狙うには車のセットアップだけではなく、指数とモーター進角、充電方法など総合的なレベルアップが必要です。またトップドライバーたちは電池のエネルギーを序盤にセーブしているだけではなく、全般的に省エネなのだと思います。タイヤ、車のセッティング、ボディなど、ラップタイムを落とさず走行抵抗を減らす方向に全てをまとめ上げる、この辺がキーポイントだと考えます。
今回印象的だったのは12ストッククラス参加選手には年齢層の高い方も多く見られたことです。ファイナリストは20歳台が中心ですが40歳台の方もおられます。日本ではストックを入門クラスに位置付けていますがアメリカでは違いました。ベテランがじっくり腰をすえて楽しむカテゴリーなのです。これは反射神経や操縦テクニックよりも知識と経験で速く走れて楽しめるストックレースならではの現象です。日本でも12ストックレースが末長く続けられるカテゴリーになることを切に願います。
EPS-J 関係者の皆さん、この度は素晴らしい機会を与えて頂きましてありがとうございました。今回のスノーバード遠征で私は12ストックレースの真の楽しさと奥の深さを知りました。レース好きにはたまらない本当に楽しい一週間でした。また近い将来に必ずスノーバードに再挑戦したいと思います。