ICSを用いたデータの取得2
前回の実験では、ICSを用いたとき放電時間を改善できることがわかりました。しかしその代わり放電平均電圧が若干損なわれる結果を得ました。前回の実験ではサイクル充放電直前の2時間にICSを用いました。今回はICSを使う時間を変え、放電特性にどのような影響があるのか調べてみました。
** 実験データはここからダウンロードできます。データの閲覧にはPro Trak Monitor(Ver1.5.5)が別途必要です。
充電パラメータは次のようにしました。
サイクル充放電の回数:5回
サイクル間の待機時間:1,2,5時間
放電までの待機時間:30分
充電電流:5A(リニア、3ステージ充電無し)
Δ電圧:0.05V/バッテリー当たり
今回の実験にはGP3300ベースの中古マッチドバッテリーを使いました。
下記の3パターンの実験結果を比較してみることにしました。下のグラフは各パターン1回分のサイクルをまとめたものです。実際にはこれを連続して5回続けて各放電特性を比較しています。
【パターン1】 サイクル充放電間に1時間のアイドル時間を設け、その間ICSによる放電をおこなうパターン。各セルの電圧は約0.3〜0.4Vまで降下している |
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【パターン2】 サイクル充放電間に2時間のアイドル時間を設け、その間ICSによる放電をおこなうパターン。各セルの電圧は約0.0〜0.1Vまで降下している |
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【パターン3】 サイクル充放電間に5時間のアイドル時間を設け、その間ICSによる放電をおこなうパターン。各セルの電圧は完全に0Vになり、約2.5時間0Vが維持される |
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Pro Trak Monitorプログラムで各サイクル充放電のデータを比較します。ICSによる放電時間を調整することで放電平均電圧に変化があらわれました。 |
それではデータをまとめてみます
1)ICSによる放電を1時間おこなったとき
サイクル回数
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放電時間(30A)
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放電5分経過時の電圧
|
放電5分経過時の平均
|
放電終了時の平均電圧
|
1 |
369
|
6.70
|
6.918
|
6.818
|
2
|
361
|
6.70
|
6.945
|
6.846
|
3
|
360
|
6.69
|
6.921
|
6.829
|
4
|
369
|
6.72
|
6.935
|
6.835
|
5
|
366
|
6.70
|
6.948
|
6.849
|
平均
|
365.0
|
6.702
|
6.9334
|
6.8354
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2)ICSによる放電を2時間おこなったとき
サイクル回数
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放電時間(30A)
|
放電5分経過時の電圧
|
放電5分経過時の平均
|
放電終了時の平均電圧
|
1 |
360
|
6.80
|
6.922
|
6.834
|
2
|
369
|
6.70
|
6.921
|
6.838
|
3
|
369
|
6.71
|
6.929
|
6.834
|
4
|
367
|
6.68
|
6.908
|
6.81
|
5
|
364
|
6.69
|
6.89
|
6.801
|
平均
|
365.8
|
6.716
|
6.914
|
6.8234
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3)ICSによる放電を5時間おこなったとき
サイクル回数
|
放電時間(30A)
|
放電5分経過時の電圧
|
放電5分経過時の平均
|
放電終了時の平均電圧
|
1 |
354
|
6.68
|
6.898
|
6.813
|
2
|
357
|
6.68
|
6.890
|
6.810
|
3
|
355
|
6.66
|
6.868
|
6.789
|
4
|
358
|
6.66
|
6.862
|
6.783
|
5
|
360
|
6.67
|
6.889
|
6.803
|
平均
|
356.8
|
6.670
|
6.8814
|
6.7996
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4)各パターンから得られたデータをグラフで比較してみました
5)各パターンの5回分平均値をまとめてそれをグラフで比較してみました。ここには前回の実験結果で得られた「ICSで放電しなかったパターン」も比較のため入れています。
6)まとめ
充電直前にICSで放電をおこなうと放電時間に改善が見られる。ICSによる放電時間を調整することで放電平均電圧を改善することもできる。2時間以上ICSで放電をおこなうと放電時間が短くなる傾向がみられた。