Team CRC Japan 世界選手権へのチャレンジ




2012年のオランダに続き2回目となる世界選手権(フロリダ)に参戦してきました。既報のとおりCRC世界戦初優勝という大きな目標を達成することができました。またCRC Japanとしては初のAメイン入り(7位)を果たしました

世界選手権という大きな舞台ではドライバーの技量はもちろんチームとしての前準備が非常に大切です。タイヤ、モーター、ESC、パーツ、移動手段、宿泊などの手配をイベント前に完璧に終わらせておかないとドライバーは集中して参戦することができません。今回は2012年参戦時の反省を踏まえて自分自身後悔がないよう万全の準備を進めてきました。今回は私から見たチームの様子をご紹介します。シャーシのセッティングデータはドライバー・メカニックより後日レポートされます

今回世界選手で投入したプロトシャーシ(名称未定)は8月18日にCRCより送られてきたものでした(フロントエンドプレート、メインシャーシ、ダンパーブレースの3パーツ)

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主要部分の穴位置やホイールベースやトレッドなどのディメンジョンは現行シャーシと同じであるため走行状態までくみ上げるのは比較的容易でした。プロトシャーシのテストは100% CRC Japanで担当し、ハヤト・カズキ・ヤッキーさんが精力的に各サーキットで走行を重ね、そこから得られたデータをCRCにフィードバックし選手権に備えました。シャーシの選択肢として現行のAltered Egoでの参加もあるわけでテストはEgoとプロトを比較しながら両シャーシの特性を見分けるむずかしいものだったと思います。CRCからの制約は無く、どちらのシャーシを使っても良い事になっていたためさらにそれが判断をむずかしくしていました。世界戦直前までハヤト選手はフィーリングから現行Altered Ego、カズキ選手はプロトシャーシをチョイスする流れでした。しかし日本を離れる前日のクレスト徹夜テストでハヤト選手がカズキ選手のプロトシャーシをドライブしこれまでと違うイメージを持つことができ全員でプロトシャーシを選択して選手権に臨むことになりました。ここまでプロトタイプをずっとドライブしてきたカズキ選手のノウハウをチーム内で共有することが可能になりこれは結果として大変良い事でした

出発前日の徹夜テストの一コマ。一睡もせずこのあと成田空港へ

 

本戦会場のカーペットはCRC、グリップ剤はLGCが指定となりました。クレストスピードウェイで使われるスティッキー・フィンガーズ トラクションコンパウンド(日本仕様)、Snowbirdなどアメリカのインドアイベントでよく使われるSTXに比べるとLGCは大変グリップが弱いものです。日本人ドライバーは弱グリップ環境に慣れています、反対に海外ドライバーはグリップの弱い環境での経験が少ないため日本が環境的に有利な状況だったと思います。今回はシャーシと同時にタイヤのテストも十分おこないPM3 GX35タイヤ(前後)一択で大丈夫という結論に達しました(実際、CRC Japanドライバーは世界選手権でGX35以外のタイヤは全く使いませんでした)。国内のテストではあり得ませんでしたがコーナーでめくれるようなハイグリップになった場合に備えてCRCにはラバー系タイヤ(ピンク、ブルーなど)を一応準備するよう依頼しておきました

問題は何セットのタイヤを準備するかという点でした。予選は6回、Aメイン決勝は3回と発表されていたのですが練習走行回数が全く読めなかったため前回の世界選手権を参考に1人18セット準備することにしました(その後国内のテストで本戦用タイヤを使ってしまったためいくつかの追加が必要だった)

GX35タイヤは事前にCRC社にも送りCRC本社のサポートドライバーであるHubert Honigl選手、Andy Moore選手、Marc Rheinard選手を日本からサポートすることなりました(Hubert Honigl選手は本戦欠席)

今回は接着整形済みタイヤを準備できなかったためホイールの接着と整形はクレスト店長石岡さん、ヤッキーさん、チームメート友吾に任せました。アメリカでは接着整形済みをタイヤを使うのが常識のためCRC社で1つ1つ接着・整形するのは大変だったはず(しかしその努力が大きな結果に繋がりました)

モーターは初めからビジネスパートナーであるTRINITY社のものを使うことを決めていました。今回はモーターチューナーJimさんが現地にいらっしゃらないと伺っていたため事前にどのようなセットをおこなうべきかアドバイスをいただきました。モーターはIFMARの公認が取れているD3.5 3.5Tです(D4は発売直後で公認がとれなかったようです)

ビジネスパートナーTRINITY社のオーナーであるアーニーさんと記念写真。お世話になりました

ESCはチームでずっと使っているAdvanced Electronicsのブラックダイヤモンド(ADV1004)を使用し今回はPCから一部セットの変更をおこなったようです(この辺は後日提出されるチームレポートで言及されます)。ブースターはLaje社の製品を使用。キャパシターはTeam WaveのTYPE-R、スパーギヤはPRSの94T、バッテリーは現地で急遽TRINITYからサポートしていただけることになったためこれを使用しました

 

現地ではヤッキーさんがメカニックを担当。ミスが許されない状況で最高の結果を残さなければならないため集中力を求められる過酷な仕事でした。メンテをおこない、走りをチェック、ドライバーからの要望をセッティングで具現化してくれました。ドライバーとして世界選手権で走りたいという欲求もあったはずだけどそれを我慢してチームに貢献してくれました

 

クレスト店長石岡さんはドライバーが使用するタイヤ管理をおこなってくれました。必要な本数を必要なドライバーへ・・ 言葉で言うと簡単そうですが数量管理など絶対に失敗できない重要な仕事をこなしてくれました。息子であるハヤト選手が走っているときは気が気でない様子でしたが「これはいける」という局面に何度も遭遇して胃が痛いとプレッシャーを感じていました

 

Team CRC Japanメンバーが全員お世話になっているKOプロポ様には今回も手厚いサポートをしていただきました。世界選手権ではトラブルフリーだったプロポとサーボですがいざというときに迅速にバックアップしてくれる体制が整えられていたお陰でレースに集中することができました。穴原さんにはハヤト選手の車だしを毎回していただきました(全日本からこの体制で縁起が良い)。KO USAのロバートさんにはおいしいレストランを紹介していただくなど公私ともにお世話になりました

 

現地入りしてCRCと合流したときに彼らがJapanチームとは異なるタイヤで練習走行をおこなっていることを知って驚きました。事前にこちらからGX35だとアドバイスしていたのに・・忠告はしましたがまずは彼らが使い慣れたタイヤを試したいようでした。しかしハヤト選手がずば抜けて快走しているのを見て誰もがGX35を選択して使用しました。そのあとハヤト車、カズキ車をチェックして良い部分を真似ているようでした。結果としてこれがMarc Rheinard選手の優勝に繋がったと確信しています。CRC社長のフランク氏からも「日本チームの協力がなければ今回の優勝は無かった」との言葉をいただきチームみんながやってきたことが形になったと実感しました

チーム内のコミュニケーションは最高。皆が言うことを聞きあって「次はこれやってみよう」とアイデアが出てくる

残念ながら日本人CRCドライバーを表彰台の真ん中に送り出すことはできませんでしたが予選で毎回トップを走る局面があるなどトップを取る素地は確実に出来上がっていると感じました。チームとして初めて全日本に参加したときは次になにをやればよいのか、どのような方向にセットすれば良いのか迷ってしまうこともありましたが今回の世界戦は1つの道がしっかりと見えチームが一丸となってそれを進んだ感じがしました

 

チームメートAndy Moore選手よりも高順位でレースを終えたカズキ選手。帰国翌日にはチームレポートを提出し気合いを感じました(レポートは数日中に公開します)。すでに次のレースを見据えて彼は動き出しています

 

CRC Japanエースドライバーのハヤト選手(右)。頂点目指しつつCRC Japanの若手を引っ張っていきチームパワーの底上げを期待したい。帰国翌日にはクレストナイトレースに参加し彼の次なる挑戦は始まっているようです

 

CRCの地元アメリカでの世界戦優勝を目標にやってきて日本人ドライバーではなかったもののMarc Rheinard選手がそれを実現してくれて安心しました。ハヤト選手は世界戦初Aメイン入りを決め、カズキ選手も自己最高位でイベントを終えましたがすでにさらに上を向けて心を新たにしているはず。次回は今回を超える結果を残すよう私も出来る限りの協力をしていきます

 

これからはワールドチャンピオンチームとしてワンランク上のチャレンジを続けていきたいと思います。今後もCRC Japanの活躍にご期待ください

 

World Champion Team CRC Japanオーナー:矢野 皇彦